石工の仕事

昔、あるところに、一人の若い石工がおりました。毎日毎日、石切場に行き、『トンチン、トンチン』と石を切って、汗を流していました。

 ある日のこと、昼飯をすませた石工は、ちょっと一服と横になりながら、空をながめ、ひとりごとを言いました。

「オレは、朝早くから夕方は遅くまで、手にはマメをいっぱい作って働いているのに、おてんとうさん(太陽)はただぴかぴか照らしていればいいし、楽なもんだよなー」......

「そうだ、オレも明日からおてんとうさんの仕事をしよう。」と、石工は次の日から太陽の仕事をすることにしました。

01石工.jpg 

朝起きて、夕方山にかくれるまで、ただピカピカ照らすだけの気楽な仕事が続きました。

「こりゃー、楽なもんだ。朝はちょっとねむいが、あとはなーんもきつくない」

 ところがある日、どうしたことかあたりが真っ黒になり何も見えません。石工の太陽は、「何だこれは、真っ暗で照らせんじゃないか」と、目の前をさわってみると、それは真っ黒な『雨雲』だったのです。

 そして下界を真っ暗にすると、激しい雨を降らせ始めたのです。しばらくすると、雨をやめ今度は『いわし雲』に姿を変え、すいすいと大空を泳ぎ、次はモクモクと大きな『入道雲』にと姿を変えて楽しんでいます。

  02雨雲.jpgそれを見ていた石工の太陽は、

「こりゃ、雲の方がおもしろそうだ。明日から雲の仕事をしよう。」といって、次の日から雲になりました。

03雲.jpg

 

 石工の雲は、あちこちに行っては、真っ黒になったり、気ままに形を変えたりして大空にゆうゆうと浮かんで、楽しく遊んで暮らしました。

 するとある日、突然ピューッととんでもないところへ吹き飛ばされてしまいました。

04.1風.jpg

「なんだなんだ、こんなはずじゃなかった。雲より強くて、いい仕事があったのか?」と、よく見ると、それは『風』でした。

「これはいかん、こりゃ風の方が良い。すぐにでも風の仕事をしよう」と、今度は大きな風になってあちこち吹き飛ばしながら遊んでまわりました。

05風.jpg 

ところが、どうしたことか、石工の風は吹けども吹けどもびくともしないものに出会ったのです。

「こりゃ、一体なんだ」と、まわりを見渡すと、それは田んぼの『土手(どて)』でした。

「なるほど、いろいろと仕事を変えてきたが、土手はいい。ただデンと座って何もしなくてよい。これは一番いい仕事だ。明日から土手の仕事をしよう」と、今度は大きな土手になって、ずいぶん長い間ゴロンと寝そべって暮らしました。

06土手.jpg 

そんなある日、腰のあたりがむずむずしてきました。

「こりゃどういうことだ」と、石工の土手はよく見ると、なんと『モグラ』が穴を掘っていました。

 長いことゴロンと寝ていたので気がつかなかったのですが、あちこち穴がいくつも掘られていたのです。

 

07もぐら.jpg

「こりゃ、どんな大きな土手でもモグラには勝てんな。土手より強いものがいたとは、よし明日からモグラをやろう」と決めました。

 それからあちこちの土手を掘りまくり、田んぼの水を流してまわりました。そしてお百姓さんたちが困るのを見て「ゆかい、ゆかい」と笑って暮らしました。

 

08もぐら.jpg 

ある日のこと、石工のモグラはいつものように、せっせと穴を掘り進んでいたところ、どんなに掘っても掘っても、ツメが痛くて掘れません。とうとう血が出てきました。

 

09もぐら.jpg

「なんだ? モグラに掘れないものがあるのか。今までずーっと、楽な仕事、強いものへと仕事を変えてきたのに、まだ強いものがいたのか?」と、よーくさわってみたら、それは『岩』でした。

「そうか、岩が一番強いのだ。」といって、今度は岩になりました。

 

10岩.jpg

「岩はただデーンと寝ているだけでいいし、だれにも負けない。なんで、最初からこの仕事を選ばなかったんだろう。オレはもともと石工だったのだから目の前にあったんだ。」

  何年かたちました。ある日のこと、トンチンカン、トンチンカンと、ノミとげんのうで頭を削るものがいます。

「痛い、痛い。なんだ、岩より強いものがいたのか?」頭が少しずつ削られていく激痛の中で上をよく見たら、それは『石工』でした。

 

11岩.jpg 

 

 

「えっ? 今までいろいろ仕事を変えてきたが、最初にオレがやっていた石工の仕事が一番強かったのか。なーんだ、そうだったのか、だったらもう一度石工の仕事にもどろう」と思いました。

 ところが、そう思っているうちにも岩は、みるみる間に削られていき、もう次の仕事につくことはできない体になってしまったのです。

 

12最後.jpg 

岩を削っている石工たちは、永い間その仕事を続けてきたのでみんなものすごい熟練した技術を身に付けていました。あっという間もなく岩は削られてしまい、「石工の岩」はバラバラにいろんなところへと運ばれていきました。     (おわり)

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