利口になる薬

 昔、あるところにおじいさんと、とてもかしこい孫が暮らしていました。

 

 ある日のこと、おじいさんが畑を耕していると、そこへ馬に乗った、いじわるそうなお侍が通りかかりました。

 

 実は、そのお侍はお城のお殿様で、よくお忍びで、一人馬に乗って城を出て、村人にあうとなんやかんやといじわるな『なぞかけ』を言っては困らせていました。村人は、その殿様を遠くから見つけるとそそくさと隠れていました。

 

 お城の家老や重臣たちも知ってはいたのですが、下手に忠言をすると逆にお手打ちになるかも知れないので、見て知らんふりをして、

 

1挿絵1.jpg「殿には困ったもんだ。全くまつりごと(政治)もしないし、領民からは嫌われているし、若君は頭もいいし、殿にはご隠居してもらおうか」

「とんでもない、そのようなことを言えば、即首ものぞ」と、なげいていました。

 

 

その日、おじいさんはあまりいっしょうけんめい鍬をふるっていましたので、目の前まで殿様が来るのに気づきませんでした。

 

いきなり、殿様は、

「おい、じじい、今日は今まで何回鍬をふるった。」

「えっ、あっ、へへぇ、そんなこと、いちいち数えておりません」

「あとでもう一回まわってくるから、それまでにちゃんと思い出して数えておけ。そうでないとひどい目に合わすぞ」と言って、馬で去っていきました。

 

2挿絵2.jpg おじいさんは、困った顔してすわりこんでいましたら、そこへ孫が野菜種をもってやって来ました。

 

「じいちゃん、どうしたんね、困った顔して」

 

「かくかくしかじかで、鍬をふるった数を言わんと、どんな目にあうやら、困った困った」

 

「なあんね、そんなら適当に1万8回と言うたい。なしてそれがわかったかと聞かれたら、お侍さんの馬は朝から何歩走ってきたのか、と聞き返せばいい」

 

と言って、先に家に帰っていきました。

 

 おじいさんは、それは名案だと元気を取り戻し、また畑仕事にせいを出しました。

 

すると、さきほどの殿様がやって来て、

 

「思い出したか」と言ったので、

 

「へえ、今ちょうど18回目の鍬をふるったところです。

ところで、お侍様の馬は、朝から何歩走ってきなさったか」

 

「うーーむ、じじい、それは誰かの入れ知恵じゃろう? 

なに、孫に教えてもらっただと。 

その知恵のある孫にこの薬を飲ませろ。もっと利口になる薬だ」

 

 お殿様は、幼い子供に知恵負けしたのがくやしくて、おじいさんに毒を渡したのです。

おじいさんは、その薬を家に持って帰りました。

 

 そして、孫に頭がよくなる薬だというのをやりました。

孫は、

 

「薬で頭がよくなるんなら、世の中あほうはおらんわい」

 

と言って、その薬をぽいと捨ててしまいました。

 

 その次の日、孫とおじいさんは、いつものように畑で仕事をしていましたら、またそのお侍が立ち寄りました。

 

 元気そうにしている孫を見てだまされなかったのを頭に来て、

 

「おいぼうず、薬は飲んだか」

 

と言いました。孫は、

 

「あい、おかげで昨日までよりうんとかしこくなったです」

 

3挿絵3.jpgと言ったので、殿様はびっくりして、お城にとんで帰りました。

 

 そしてあれと同じ薬をとり出し、ごくんと飲みました。

 

 その後、お城では『急の病(やまい)』で死んだ城主に代り、かしこい若君があとを継ぎ、政治も立派になりましたとさ。

 

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